店をやるのは国分寺、それは僕の中では決まっている話だった。
国分寺は、上京してすぐからだから、ちょうど10年ぐらい住んでいる。
妻に関して言えばもっと長い。
僕たちが毎晩せっせと飲み歩いてるおかげで、
自分で言うのもなんだがけっこう顔は広い。
みんな昼間に会うとちょっと照れちゃう感じだけど。
実家の秋田より地元意識は強いかもしれない。
そういうわけで国分寺である。
ただ妻はそうでもないらしい。
妻の場合、仕事もずっと国分寺だ。
ちょっとした街の看板娘だ(オレが言うなよ)。
今のお店に対して遠慮みたいなのもあるだろうし、
また知った顔を見ながら仕事をすんのもどーかなって
思っているのかもしれない。
毎日僕は妻を説得した。
土地勘のないところでお店をやる大変さ
(例えばどこで仕入れをするかとか)、
来てくれるであろうお客さんがすでにいるというありがたさ、
この街で新たな部族を築いていこうではないかとか、
なんとかかんとか。
しばらくして妻は「わかった、国分寺にしよう」と言う。
「やっぱ、通うの面倒くさいもんね」
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