fuckin'1 モチヅキタツシ

学生時代仙台に住んでいた私は、引っ越しを繰り返しており、定住の地を持たない 生活でした。
そんな仮の棲のひとつに「コ−ポ斉藤」がありました。
広瀬川に面した 新築の3階建ての物件で、
付近はS女学院、D女学院、県立2女高校、
川向こうは 宮城県立美術館という、
まさに文教の地「角五郎」(つのごろう)に建つ白亜の アパ−トでした。
さらに、大家さんは小料理屋を営む(1階に店舗あり)「おかみさん」で
彼女の 朝夕のまかないつきである。
この食事は半地下の食堂に用意され、住人それぞれが 利用時間内に来て勝手に食べることができた。
当然、場所柄女子学生率は高く、
おまけに5ある軽音楽サ−クル中もっともメジャ− な「ストレンジャ−ズ」の4年バンドの
超人気ボ−カル「フジノ ユミ」さんも 入居している!!
食堂での出会いは自然だし、これは明るい青春だあ・・・・・。

目論見は外れ、おかみさんは更年期なのか、
まかないにやる気がなく夕食は カレ−・煮魚・カツ丼のロ−テ−ション。
朝食はハム・レタス(非サラダ) ご飯・そして納豆・・・
これだと納豆食べないと結構つらい。
東海食文化圏であり ソ−スカツ丼である山梨の僕は、思い切って食べることにした。
きっと慣れれば おいしい筈・・・・・・ うまくね。
いやいや先入観だよ・・・・・ 味しないし 臭い。
食べ方工夫して・・・・・ 食欲ね。
これが毎朝続いた。本当におかみさんは 毎朝その納豆を出していた!
結局住人のあらかたは、まかないのオプションを外すことにしたため、
半年後に 食堂は閉鎖された。その間ユミさんと食堂で会えたのは1度きりだった。
なんかね、納豆を見るとそんな時の東北のさむざむとした空気の漂う食堂を思い出すんだよね。
食堂では女子は固まって、なぜか黙々と煮魚やら、ハムを口に運んでいて とりつく島もなく
(ま、東北の女子は奥手ださ)みそ汁の湯気が、新建材の壁を濡らして いた。
そこではみんなが「孤独」に醤油をかけて、ご飯にのせていたんだと思う。
そして僕はまた1日をすりつぶしていた。

 



[fuckers]  [納豆] [index]