[02]KUUKUU

祥寺の「諸国空想料理店KUUKUU」というお店があった。
もしかしたら知ってる人がいるかもしれない。
去年(03年)の暮れに残念ながら閉店してしまった。
僕はそこで7,8年働いていた。
中どうしても長い旅行に行きたくなって辞めたり、
よその店で働いていたりという時期もあったんだけど、
最後の1年はその中で、激動の時間を過ごしていた。

 
は料理のことは99%そこで勉強したと思っている。
別に学校に行ってたわけでもないし、
どっかで修行してたわけでもない。
KUUKUUで、タマネギってどうやってみじん切りするんですか、
から始めたわけだ。
KUUKUUをどんなお店かとカテゴライズするのはとても難しい。
分かりやすくエスニック料理屋みたいなとらえかたを
されたりもしてたけど、それもピンとこない。
なにせ空想料理店である。
言っちゃえばなんでもあり、 バーリトゥードなお店であった。
 
ェフの高山さん(今となってはすっかり売れっ子)は
いい意味で素人臭い料理人だったと思う(あくまでいい意味でね)。
常識にとらわれず(もしかしたら知らないだけかもしれないが)、
自分の五感だけを頼りに料理を作っていってた。
街はずれで夜な夜な繰り広げられる錬金術ショー、そんな感じ。
そばで見ていて影響受けないわけがない。
高山さんがいなくなった後のKUUKUUでも、
スタッフみんな根っこのとこでは一貫していたなと思う。

 
スター南椌椌を忘れてはいけない。
永遠の空想オヤジ。
「諸国空想料理店」というコピーを作った人というだけで、
一生ついていきます、と僕は思う。
ああいうお店を作れるのはやっぱりマスターだけだ。
スターとはよく飲みにいった。
カウンターに並んで、「プロジェクトX」の話をして、
二人で泣きながら飲んだテキーラの味を僕は忘れない。
にかく僕にとって、とても大事なお店だった。

KUUKUUがなくなって、
しばらく宙ぶらりんの生活をしていた(いわゆる無職)。
自分でやろう、そう思いながら僕は昼間のビールをきめていた。

ま我が家にはKUUKUUのかけらが転がっている。
カウンターと木枠の窓。僕たちの店でそのまま使うつもりだ。

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